2019年05月27日

京極夏彦『今昔百鬼拾遺 河童』

〈2019年読書感想23冊目〉
京極夏彦『今昔百鬼拾遺 河童』


〈百鬼夜行〉シリーズの番外篇である〈今昔百鬼拾遺〉の第二作目。
前作の鬼に引き続き,今作では河童が扱われています。
次作は既に天狗と発表されているので,今シリーズは有名な妖怪を扱う模様です。
とは言え,有名だからこそ,その解釈は様々で興味深いものがあります。
冒頭からの全国の伝承における河童の多様性はそれを如実に表しているでしょう。
主人公は引き続き中禅寺敦子と呉美由紀のふたり。
また,薔薇十字探偵社の益田龍一もその有能ぶりを結構見せてくれます。
飄々として韜晦するあたりは相変わらずですけれどもね。
〈今昔続百鬼〉の多々良勝五郎も登場し,場を混乱させるのが楽しい。
尤も,あまりやりすぎると割と鬱陶しくなってくるのですが。
主筋は連続水死事件と模造宝石事件の謎を追うというもの。
一見無関係に見える事象がひとつに収まっていく過程はやはり楽しい。
特に今作は前作では目立たなかった敦子の推理というか想像が光ります。
そして,最後に美由紀の演説をもって物語を締めるという定型の模様。
まあ,美由紀は出番自体は多いのですが,それ程に目立ってはいません。
最初に河童談義をしていた美由紀の友人はもう少し物語に絡んで欲しかったなあ。
小山田,比嘉,池田,磯部と刑事達は意外に存在感がありました。
事件そのものは〈百鬼夜行〉本篇に比べるとだいぶん薄味です。
これは敦子と美由紀が探偵役を務めるという関係上仕方がないかもしれません。
それでも前作よりも今作の方が余程面白かった。
〈百鬼夜行〉シリーズを読んでいるという満足感を十分に得ることが出来ました。
前作よりも季節は更に進んでおり,同時期の京極堂達の動向にも触れられます。
既に日光の事件は解決しており,現在は東北で別の事件に巻き込まれているとのこと。
つまり『鵼の碑』以降の作品ということが言えるのでしょう。
仄めかしばかりで本篇がまるで刊行されないのは苛立たされます。
様々な事情はあるのかもしれませんが,早期の展開を望みたいと思います。
同時に『鵼の碑』やその次の作品では敦子の出番はほぼないのかもしれませんね。
大好きな人物なので,それは少し残念な気がします。
いずれにせよ,次作『今昔百鬼拾遺 天狗』も期待したいものです。

(角川文庫 2019年)

タグ:京極夏彦
posted by 森山樹 at 06:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想

2019年05月26日

購入記録(2019.05.26)

ジェームズ・ロリンズ ケルトの封印(上) 竹書房文庫 ¥756
ジェームス・ロリンズ ケルトの封印(下) 竹書房文庫 ¥756
ジェームズ・ベッカー 皇帝ネロの密使(上) 竹書房文庫 ¥713
ジェームズ・ベッカー 皇帝ネロの密使(下) 竹書房文庫 ¥713

『ケルトの封印』は〈シグマフォース〉の第5作目。
だんだん面白さが微妙になっているのが不安です。
ケルトの何を題材にしているのかは楽しみです。
秘密結社ギルドやその暗殺者セイチャンが登場するのは嬉しい。
『皇帝ネロの密使』は同じく竹書房文庫の別シリーズ。
此方も歴史の謎を追求するミステリィアクションのようです。
額面通りに面白いと嬉しいなあ。
幾作か既に邦訳されているので,せめて最初の方は面白くあって欲しいもの。
暫く先になると思いますが読んでみるつもりです。

〈2019年書籍購入覚書〉 計36冊
posted by 森山樹 at 17:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 購入記録

ジェームズ・ロリンズ『ロマの血脈(下)』

〈2019年読書感想22冊目〉
ジェームズ・ロリンズ『ロマの血脈(下)』〈シグマフォース〉


謎に包まれたロマの出自とチェルノブイリを舞台にした陰謀に迫る〈シグマフォース〉の第4作目。
これまでの作品の中で一番内容が薄かったような気がします。
サヴァン症候群については最早手垢が付いた要素でありますしね。
ロマとデルポイの巫女との関係についても特段に劇的な解釈はなし。
面白くないわけではないのですが,期待していた頓痴気さがありませんでした。
チェルノブイリを利用した世界的な陰謀も普通と言えば普通な感じ。
敵役のニコライ・ソロコフやジョン・マップルソープも魅力を感じなかった。
結局のところ,その背景が明かされなかったマップルソープは気になりますが。
とは言え,シグマフォースとしては大きく揺れ動いた物語だったのも事実。
ショーン・マクナイトが退場したことで政治的な打撃はかなり大きい筈。
彼の後任として如何なる人物が就任するのかが問題となるでしょう。
そして,モンク・コッカリスが帰還を果たしたのも嬉しいところ。
但し,その記憶の一部を失っており,完全復帰が可能と言えるのかどうか。
今作はモンク・コッカリスを取り戻すがための物語であったということでしょう。
まさかコワルスキが美人の恋人を手に入れるとは思いもしなかったけれども。
新たに登場のエリザベス・ポークやシャイ・ロサウロは常連化するのかな。
サーシャが予言するセイチャンとグレイ・ピアースの不穏な運命も気になります。
このあたりは次作以降の伏線としては大いに楽しみ。
やはりギルドと敵対してこその〈シグマフォース〉と思いますね。
毎回敵に潜入されるシグマフォースの危機管理はかなり問題あり。
尚且つ,今作ではそれで長官を失ってしまったわけですから。
事件は解決したとはいえ,普通に考えれば解体されてもおかしくないけどなあ。
組織の立て直しは次作以降で焦点が当てられるのでしょうか。
楽しめたのは確かですが,それでもなお不満はかなり大きかった。
歴史と科学の融合に空虚な響きを感じてしまいます。
少し飽きが来ているので次作を読むのは少し先になるかもしれません。

(竹書房文庫 2013年)

posted by 森山樹 at 06:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想

2019年05月25日

ジェームズ・ロリンズ『ロマの血脈(上)』

〈2019年読書感想21冊目〉
ジェームズ・ロリンズ『ロマの血脈(上)』〈シグマフォース〉


引き続き読み続ける〈シグマフォース〉シリーズの第4作目。
短期間に続けて読んできた弊害か多少の飽きを感じてしまいます。
下巻を読んだら暫く間を置くのも検討したいところです。
今回の題材はロマとサヴァン症候群,そしてチェルノブイリということかな。
冒頭で語られたデルポイの巫女による神託も絡んでくるのでしょう。
これまでの作品で主に敵として対峙してきたギルドが登場しないのは少し寂しい。
各陣営が錯綜している感はありますが,ロシアと米国国防情報局が敵という感じかな。
特殊な能力を増強された少年少女たちを巡る戦いとなりそうです。
今までになく,先の展開が見通せないのはいいような悪いような。
前作で死んだと思われていたモンク・コッカリスはやはり生存していました。
但し,記憶を失っており,現在はウクライナで別行動中。
インドで行動するグレイ・ピアースといつ邂逅するかが楽しみです。
ただ,まあ,その生存理由はやや都合が良過ぎる面は否めず。
リサやキャットも登場しますが,今回は新たな仲間との行動が主となっています。
前作に引き続きコワルスキが一種の清涼剤としての存在感があるのは嬉しい。
エリザベス・ポークやシャイ・ロサウロらも悪くありません。
とは言え,今後も継続して活躍するように思えないのが難点かなあ。
シグマフォースが誕生するにあたっての裏話が明かされるのは興味深いところ。
そして,その創設に関わった人物が現在は敵となりそうというのも熱いです。
今のところは可もなく不可もない,いつもどおりの〈シグマフォース〉ですね。
此処から如何に牽強付会な歴史と科学の融合を見せてくれるのか楽しみではあります。

(竹書房文庫 2013年)

posted by 森山樹 at 06:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想

2019年05月24日

購入記録(2019.05.24)

京極夏彦 今昔百鬼拾遺 河童  角川文庫 ¥821
佐藤亜紀 スウィングしなけりゃ意味がない 角川文庫 ¥864

京極夏彦の『今昔百鬼拾遺 河童』は『今昔百鬼拾遺 鬼』に続く新作。
引き続き中禅寺敦子と呉美由紀が主人公を務めるようです。
前作は講談社タイガで今作は角川文庫というのが不思議。
店頭で探すのに大変手間取ってしまいました。
次は新潮文庫らしいので気を付けておかないとなあ。
佐藤亜紀はナチス支配下での音楽を描いた物語。
大好きな作者の歴史題材小説なので楽しみにしています。
大切に読みましょう。

〈2019年書籍購入覚書〉 計32冊
posted by 森山樹 at 19:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 購入記録