2015年12月29日

2015年12月読書記録

2015年12月に読んだ本は以下の通り。
ピーター・トレメイン 『消えた修道士(上)』
ピーター・トレメイン 『消えた修道士(下)』
田中芳樹 『アルスラーン戦記(9)旌旗流転』
葉山透 『0能者ミナト(6)』
鯨統一郎 『大阪城殺人紀行』
桜井俊彰 『消えたイングランド王国』

12月に読了した本は6冊。
相変わらず,精神的に不安定過ぎて苦しんでいます。
早く趣味活動に専念出来るようになりたい。
『消えた修道士』は〈修道女フィデルマ〉の最新邦訳。
古代アイルランドを舞台とした陰謀劇が楽しいです。
フィデルマとエイダルフの関係の展開も興味深い。
次の邦訳を期待しています。
『旌旗流転』は光文社文庫版〈アルスラーン戦記〉の第9巻。
再読ということになりますが,相変わらず面白い。
物語としては停滞の中に徐々に動き出している感があります。
蛇王ザッハークとの決戦の序章として面白いです。
早く本篇の続きも刊行して欲しいもの。
『0能者ミナト』も安定した面白さが嬉しい。
今回は件を題材とした長篇でありました。
更なる過去篇も楽しみに待ちたいと思います。
『大阪城殺人紀行』は〈歴女学者探偵の事件簿〉第2作目。
軽妙な雰囲気は悪くありません。
もう少し歴史考察に深みがあるといいのですけれども。
とりあえず,次回作も読もうという気にはなりました。
『消えたイングランド王国』は小説ではないので別ブログに感想を掲載。
とは言え,物語性がかなり高いので楽しめます。
ノルマン征服以前の英国の姿が非常に興味深い。
クヌートやトルケルらの実像も面白かった。
この種の新書はもっと読み進めていきたいところであります。
posted by 森山樹 at 07:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録

2015年12月27日

鯨統一郎『大阪城殺人紀行』

〈2015年読書感想52冊目〉
鯨統一郎『大阪城殺人紀行』


 『邪馬台国殺人紀行』に続く〈歴女学者探偵の事件簿〉第2作目。今回は徳川秀忠と江の娘である千姫に纏わる謎と殺人事件を静香,東子,ひとみの三人が鮮やかに解き明かします。と言っても,前作の主題であった邪馬台国程には千姫に惹かれるものがないのは事実。尤も,今回の方が歴史的な考察としては楽しめた感があります。前作は『邪馬台国はどこですか?』の印象が強過ぎたのも不幸ではありましょう。三人の美女たちによる中身の乏しい会話は相変わらず。それが魅力でもあり,或いは鬱陶しく感じる要素でもあります。ひとみの静香への対抗心は悪くないですし,東子の静香への崇拝にも似た念も楽しい。その静香の俗でありながら,何処か超然とした態度が一番好きではあります。その静香が『邪馬台国はどこですか?』の宮田六郎を彷彿とさせる人物に触れるのが素敵。いつかまた,ふたりの競演を期待したいものであります。

 今作に収録されているのは3篇。「姫路城殺人紀行」は同じ学校の生徒が連続して不審死した事件にアルキ女デスの三人が挑みます。事件の真相も千姫の噂の真相も割合に薄め。あまり印象に残っていません。事件そのものが見通し易いですしね。静香が容疑者のプロであるというひとみの発言は面白かったです。ひとみも割と疑われることが多いように思いますけれどね。「大阪城殺人紀行」は宝石店から奪われた巨額の金塊とそれに絡む殺人事件が描かれます。豊臣秀吉と淀君,秀頼,千姫の構造を思わせる容疑者の繋がりが楽しい。大阪城に豊臣家が隠した金塊の謎を追う宝探しの要素も秘められています。これはこれで悪くないかなあ。複雑な人間関係の機微が楽しめました。一番好きなのは「熊本城殺人紀行」。謎めいた美人OLの殺人事件と熊本城に逃げ隠れていたという豊臣秀頼の伝説が主題となります。殺人事件の真相は悪くないのですけれども,大掛かり過ぎて逆に発覚が早そうな気がします。何処かで必ず綻びが生じる筈。大坂夏の陣で死んだ筈の豊臣秀頼が熊本城で生き長らえていたという説は初めて聞きました。熊本で有名な伝承なのかしら。その根拠が熊本城の或る間の名前というだけでは弱いがしますけれども。まあ,それはそれとして面白い説ではありました。一番好きなのは事件が終わって,熊本を離れるときに静香が残した言葉ですけれどね。正直,静香には似合わないけれど,逆に良く似合っている発言にも思えます。余韻が残る物語でありました。

 前作同様に軽めのミステリィとしては楽しめます。歴史的考察を期待すると当てが外れそうではありますけれども。後はアルキ女デスの三人が気に入るかどうかというところでありましょう。個人的にはいささか辟易する部分も含めて会話次第かなという印象があります。その意味ではいかにも鯨統一郎らしい作品に思えます。今作で舞台となった三つの名城はいずれも訪れたことがあるので親しみ易かったというのも楽しめた要素のひとつかな。いずれにせよ,存分にという程ではないにせよ,楽しめた作品でした。次回作で扱われる歴史の題材に期待します。
タグ:鯨統一郎
posted by 森山樹 at 21:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想

購入記録(2015.12.27)

ロード・ダンセイニ ウィスキー&ジョーキンズ 国書刊行会 ¥2,592
ヤマザキマリ ヤマザキマリの偏愛ルネサンス美術論 集英社新書 ¥821

『ウイスキー&ジョーンズ』はロード・ダンセイニの連作短篇集。
23篇の物語が収録されています。
箱入りの装丁が大変に素晴らしい。
表紙がcocoさんというのも魅力的であります。
大切にしたい一冊でありましょう。
『ヤマザキマリの偏愛ルネサンス美術論』は題名通りの内容。
感想は別ブログに任せる予定です。
というわけで,恐らくは2015年の買い納めの筈。
まだ分からないけれども。

〈2015年書籍購入覚書〉 計125冊
posted by 森山樹 at 14:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 購入記録

2015年12月25日

葉山透『0能者ミナト(6)』

〈2015年読書感想51冊目〉
葉山透『0能者ミナト(6)』


 零能者こと九条湊の過去の一端が明かされる〈0能者ミナト〉の第6巻です。閑話以外に2話収録されていますが,偶数巻ということで事実上一続きの物語となっています。今回,湊が対峙する相手は人頭牛身の怪異である件となります。件と言えば,その予言が有名ですが,件の予言の正体が面白い。まあ,割合に予測が出来るのは事実でありますが,その予言を阻止する為の条件は素直に面白かった。とは言え,その条件は完全に偶然頼りというのはちょっと残念。少なくとも,湊は件の予言に屈したということになるかと思います。但し,そこからの反撃は見事なものでありました。転生することで永劫の命を保持する件を完全に滅したというのは或る意味で歴史的な事象ということになりましょう。尤も,其処に至るまでは危機の連続でありました。超人的な身体能力を見せる湊というのも珍しいものがあります。いずれにせよ,湊の窮地を救ったのが沙耶の乙女心というのが楽しかったです。今回はあまりユウキや孝元の活躍がなかったのは残念ですけれどね。

 今回収録されているのは「首」と「件」の2話。それに閑話として「戯」も収められています。「首」も「件」も同じく件を扱った物語となりますが,「首」は高校生時代の湊が主人公というのが面白い。現在同様に斜に構えた部分は変わりませんが,年相応の幼さと素直さが新鮮でありました。同じく高校生だった理彩子との出逢いが描かれるのが嬉しい。友人である友哉に恩人である小野寺警部と湊に関わりのある人物の登場も興味深いものがありました。尤も,友哉に関しては物語の関係上,湊の回想の中でしかその人物像は窺えないわけですけれども。小野寺警部に対する湊の恩義はちょっと意外。大事な人を喪うことを恐れるが故に現在のような性格を装っているのだとすれば悲しいものがあります。だからこそ,沙耶やユウキの存在が貴重となるのでしょう。露悪的な言動とは裏腹に結果的にはふたりを護る形で湊は行動していますからね。「件」は「首」から10年を経て再び邂逅した件との戦いが面白い。化学者である堅剛猛雄の再登場も嬉しかった。彼の口から語られる大学生時代の湊の研究が興味深いです。或る意味で無意識のうちに湊は件になろうとしていたということも言えるかと思います。合わせ鏡のような存在である湊と件は結局は宿敵として対峙する運命であったのでしょう。因みに湊と理彩子の互いへの想いも垣間見る事が出来ます。ふたりの素直じゃない加減が実に可愛い。この出逢いから現在に至るまでのふたりの物語はまた描写して欲しいものです。その際には孝元も混ぜると嬉しいですね。

 少年時代の湊の意外な素顔が楽しい物語でありました。存外に熱い性格だったということが意外でもあり,けれども納得出来る部分でもあります。繊細だった雰囲気が何故此処まで失われたかというところは興味深い。そして,閑話では倫寧に対する沙耶の片思いがの空回り感が大変可愛らしかった。湊と沙耶とユウキ,湊と沙耶と理彩子,湊と理彩子と孝元,沙耶とユウキと倫寧と幾つもの三角関係が出現しているのも面白いです。このあたりの人間関係が如何に発展するのかも楽しみ。早く湊と孝元の出逢いも読みたいものです。
タグ:葉山透
posted by 森山樹 at 21:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想

2015年12月24日

田中芳樹『アルスラーン戦記(9)旌旗流転』

〈2015年読書感想50冊目〉
田中芳樹『アルスラーン戦記(9)旌旗流転』


 古代ペルシア的世界を舞台とした異世界大河ファンタジィ〈アルスラーン戦記〉の第9巻です。第二部としても2巻目を数えて色々と動きが出てきました。一番大きいのは仮面兵団を率いるヒルメスがチュルクの庇護下から離れ,再び流浪の徒に着いたということでありましょう。今巻の題名はまさにヒルメスにこそ相応しい。また,ミスルでは偽ヒルメスに仕えていたザンデが謀殺されました。第一部ではともかく第二部ではかなり好感を持っていた人物だけに残念です。このことがヒルメスの行く路に如何なる影響を及ぼすのか懸念されます。ブルハーンは忠実で勇猛ではありますが,副将という器には感じません。改めてヒルメス陣営に対してアルスラーン側に有為な人材が集まっていることが分かります。これが将器と言ってしまうのは,ヒルメスには酷に感じますけれども。実にナルサスとダリューンの会話が的を射ているように思います。そして,蛇王ザッハークの魔軍も胎動を始めました。飛来した有翼猿鬼との戦いはその嚆矢でありましょう。肥沃なパルスを狙う他国と蛇王ザッハークという敵を前にアルスラーンの前途には更なる多難が続きます。

 今巻で注目するべきは明かされたファランギースの過去でありましょう。ミスラ神に仕える美しき女神官の悲しい境遇が切ない。そして,かつての恋人の弟が蛇王ザッハークを奉ずる魔道士グルガーンというのも皮肉であります。このあたりの因縁は蛇王ザッハークとの戦いの中で大きな意味を持ってきそう。それが悲劇に繋がらないことを祈るばかりです。そして,ファランギースと並んで謎めいた存在であるギーヴの出自は未だに語られず。アルスラーンの忠臣であることに疑う余地はありませんが,此処に至っても過去の一端さえ明かされないというのが興味深いところです。そこに意味が秘められているのか気になります。また,新たな登場人物としてはチュルクの王族のひとりカドフィセスの役割も面白そう。事実上,カルハナ王から放逐され,現在はシンドゥラのラジェンドラ王のもとで捕虜となっていますが,このまま終わる人物ではないでしょう。対チュルクにおける鍵となりそうです。ラジェンドラの図々しさは相変わらず。そこがまた憎めない人物ではあります。このあたりはミスルのホサイン三世やチュルクのカルハナ王と比べて圧倒的に魅力的に感じます。パルス諸将からすれば大して変わらぬ存在かもしれませんけれども。ナルサスにすればラジェンドラ王は単純な分,扱い易い駒なのかもしれません。

 祖国解放という陽性の雰囲気に満ちていた第一部に比べ,第二部は翳りを伴う空気が漂うのが苦しい。未だに十六翼将はその最後のひとりを得ていませんが,揃ったと同時に失われていくのは自明でありましょう。みな愛着ある人物だけに誰が喪われても厳しいものがあります。とは言え,今後ますます蛇王ザッハークはその再臨への気配を濃くしてゆくことでありましょう。チュルクとミスルだけではなく,マルヤムのギスカールや流浪するヒルメスといったあたりも再びパルスに対して牙を剝くことは容易に想像出来ます。このアルスラーンの苦難の旅路が如何なる結末を辿るのか大いに気になるところであります。
posted by 森山樹 at 21:39| Comment(4) | TrackBack(0) | 読書感想