2016年01月31日

太田紫織『櫻子さんの足下には死体が埋まっている 蝶は十一月に消えた』

〈2016年読書感想6冊目〉
太田紫織『櫻子さんの足下には死体が埋まっている 蝶は十一月に消えた』


 北海道を舞台とした連作ミステリィ〈櫻子さんの足下には死体が埋まっている〉の第4作目。今回も短篇集となっています。作品を通じる不穏な雰囲気が表面化した気配もあり,転換となる一冊と言えるでしょう。過去の事件に登場した人物が再び中心となる物語があるのも嬉しい。勿論,新たに今後も活躍しそうな人物も登場しています。相変わらずの北海道の美味しいものも描かれます。ミステリィとしてはやや弱めなのは最早個性として昇華するべきなのかもしれません。流石に第4作目まで読むことで登場人物も一定の愛着が湧いてきたのも事実。とは言え,やはり個性はやや薄め。と言うよりも,濃くしようとして結果的に平凡な造形に留まっている印象があります。尤も,無為に現実離れした濃さよりは遥かに好ましいとは思えるのですけれども。主人公である正太郎の語り口がやや苦手があるというのが一番の問題であります。いい子過ぎて逆に違和感を覚えてしまうというのは否めません。これさえなければもっと楽しめるのになあと思います。

 収録されているのは3篇。どれも可もなく不可もなくと言ったところですが,表題作「蝶は十一月に消えた」は今後に大きく影響しそうな雰囲気が漂う作品。事件に関わる三人の少女の誰もに共感出来ないというのは或る意味で稀有かもしれません。この事件で少女たちを暗に事件に誘う契機を作った人物はいずれ再登場しそうな予感がします。或いはそれは櫻子さん自身への謎へと繋がるのかもしれません。このあたりはやや早計な気がしないでもありませんけれども。「猫はなんと言った?」と「私がお嫁に行く時に」は正太郎の同級生である鴻上百合子が再登場。内海刑事や磯崎先生と共に今後も折に触れて登場するのでありましょう。正太郎への淡い想いと櫻子さんへの憧れを感じるのは気の所為か。「猫はなんと言った?」は百合子の叔母である椿が巻き込まれたストーカー事件が描かれます。ミステリィとしては最初から真相が見通せてしまうのは流石に悲しい。かなり安直過ぎる気がします。椿の惚れっぽさにも違和感を覚えます。「私がお嫁に行く時に」は百合子の祖母が残した絵に纏わる物語。櫻子さんが百合子に提示した優しい解答がたまらなく素敵。今回収録の作品の中では一番お気に入りかもしれません。唯一読後感が良いというのもその理由でありましょう。尤も,これもミステリィとしてはごく弱いのではありますけれども。きちんと櫻子さんの個性を生かした上での結末に魅せられました。

 過去の作品からの蓄積を踏まえて,それなりに楽しめるようになってきた作品でした。櫻子さんの謎が幾つか提示されてきたのは今後に期待を抱かせます。新たに登場した沢さんも旭山動物園の飼育員ということで更なる活躍は望めそう。博物学趣味的にもっと濃い要素を交えてくれることを望みます。エピローグで描かれた全員揃ってのパーティでの櫻子さんの態度はやはり不可解。このあたりは今後明らかになるのでしょう。相変わらず思わせぶりな正太郎の術懐の真相がいつか明かされる日は来るのでしょうか。その日が来るのはやや怖い気もします。

(角川文庫 2014年)

タグ:太田紫織
posted by 森山樹 at 11:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想

2016年01月30日

購入記録(2016.01.30)

佐藤亜紀 吸血鬼 講談社 ¥1,998

佐藤亜紀の新作は19世紀のポーランドが舞台。
題名からも怪奇趣味溢れる作品の予感がします。
主人公の名前がヘルマン・ゲスラーというのも印象的。
スイスの独立を弾圧した代官との関係性はあるのかな。
重厚な作風から積みがちですが,早めに読みたいと思います。
一度読み始めると面白いのは折り紙つきでありますから。

〈2016年書籍購入覚書〉 計17冊
posted by 森山樹 at 21:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 購入記録

2016年01月29日

購入記録(2016.01.29)

瀬那和章 花魁さんと書道ガール 創元推理文庫 ¥734
太田紫織 櫻子さんの足下には死体が埋まっている 白から始まる秘密 角川文庫 ¥506

『花魁さんと書道ガール』は題名買い。
創元推理文庫だからこその信頼があります。
書道少女というのは素直に好みですしね。
『櫻子さんの足下には死体が埋まっている 白から始まる秘密』はシリーズ6作目。
早めに最新巻まで追いつきたいところ。
次の館が出るまでには何とかといったところでしょうか。

〈2016年書籍購入覚書〉 計16冊
posted by 森山樹 at 21:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 購入記録

2016年01月27日

葉山透『0能者ミナト(7)』

〈2016年読書感想5冊目〉
葉山透『0能者ミナト(7)』


 零能者こと九条湊と総本山の法力僧である孝元の過去が語られる〈0能者ミナト〉の第7作目です。とは言っても,出逢いが描かれるわけではないのが残念。それはまたの機会のお楽しみということになりそうです。理彩子とも既に知り合っているようですが,本篇には名前だけの登場に留まりました。この三人の若き日の物語もいずれ期待したいものです。今巻も短篇が2本収録されていますが,どちらも湊の普段見せない表情が垣間見えるのが面白い。斜に構えた露悪的な人間ではありますが,その本性は異なる雰囲気を感じます。或いは完全に捻くれるにはまだ純粋過ぎるというべきかもしれません。だからこそ,魅力的なのであり,理彩子や孝元が友人であり続け,沙耶やユウキが慕うのでありましょう。尤も,ユウキはともかく沙耶が妙に湊に毒されつつあるのは気になるところではあります。或る意味ではユウキよりも沙耶の方が影響を受けているのかもしれません。ユウキは寧ろ素直に少年らしくなってきた感があります。或いは湊を反面教師としているのかもしれませんけれども。

 上述のように2篇が収録。それにいつも通りの閑話が末に収められています。「七」は伝承に名高い七人ミサキを扱った物語。七人ミサキの本質とそれを逆手に取った湊の戦略が鮮やか。とは言え,それは大変苦いものでありました。いつもより多めの酒を呷る湊の気持ちはよく分かります。このような経験を繰り返すことで湊の現在のような人格が形成されたのかと思うと辛いものがあります。そして,それを決して割り切ることの出来ない湊の純粋さと孝元の覚悟に魅力を感じるのです。羅漢と功刀はいつか再登場するのでしょうか。結末で沙耶とユウキからの報告を受ける湊の姿が大変印象的でありました。「化」は時の止まった村を舞台とした不思議譚。その壮大に過ぎる試みが圧巻であります。そして,その試みの陰にあった小さな想いが切なくてたまりません。或る種の幸福な結末であったと言っていいのでしょうか。少なくとも,彼が満足して逝ったことだけは救いに感じます。それはともかくとして妙に懐かれる湊の姿が楽しい作品でありました。沙耶とユウキの活躍も楽しめます。というよりも,ひたすらに彼を愛でていただけのように思えるのは気の所為でしょうか。湊がいなければ物語は起こりえず,湊がいたからこそ物語は終結したというのは皮肉に思います。SF的な見地からも興味深い物語でありました。

 2篇ともに如何にも〈0能者ミナト〉らしい物語で大満足です。殊に「七」はその独自の発想が大変魅力的でありました。七人ミサキの本質なんて考えることもなく,単純に受け入れていましたが,幾らでも考えようはあるのだなあと感心します。相変わらず,閑話の肩の力が抜けた感じも楽しい。今回は理彩子が湊ともに孝元を追い詰める意外な展開が面白かったです。まあ,あれは素直に孝元に非があるような気がしてなりませんけれども。次巻への予告になっていないのは少し残念。まあ,それは読み始めてからのお楽しみということにしておきましょう巻を追う毎に加速度的に面白くなっているのが嬉しいです。
タグ:葉山透
posted by 森山樹 at 22:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想

2016年01月25日

購入記録(2016.01.25)

仁科裕貴 初恋ロスタイム メディアワークス文庫 ¥594
折口良乃 探偵事務所ANSWER  アンサーさんとさとるくん メディアワークス文庫 ¥702

『初恋ロスタイム』はSF設定が魅力の恋愛小説かな。
時間静止を如何に扱うのか楽しみです。
自分なら絶対に悪用しかしないのでしょう。
『探偵事務所ANSWER アンサーさんとさとるくん』はシリーズ二作目。
前作は悪くないけれど今一つだったので巻き返しに期待します。
都市伝説が題材というだけで心惹かれてしまいます。
その分,辛口な評価にもなってしまいますけれども。

〈2016年書籍購入覚書〉 計14冊
posted by 森山樹 at 20:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 購入記録