2019年04月19日

森晶麿『心中探偵 蜜約または闇夜の解釈』

〈2019年読書感想12冊目〉
森晶麿『心中探偵 蜜約または闇夜の解釈』


〈黒猫〉シリーズの森晶麿のミステリィ長篇です。
その〈黒猫〉が端役ながらも登場するのが嬉しい。
彼の意外な一面も見ることが出来ます。
一方でその圧倒的な思考力は健在で,ほぼすべての事件の真相を見透かしています。
〈付き人〉も登場しますが,此方は本当に端役でした。
もっとも第三者による〈付き人〉の描写は割と新鮮であります。
服毒心中した相手が別人に成り代わっていたという提示された謎は面白い。
しかし,主人公の華影忍がいい感じに屑過ぎて感情移入出来ません。
感情移入するする必要性はないんだけど,終始好感を持てないというのは辛いです。
その忍を取り巻く妻の道子や担当編集の溝渕は個性が立っています。
寧ろ,此方の方にこそ魅力を感じますね。
まあ,道子は道子で常人には理解し難い感情を持っているのですが。
衒学的な要素も含んだ事件の解決は楽しかった。
或る程度の想定は出来ていたのですが,真犯人は意外性がありました。
被害者こそが最大の加害者というのはありがちですが。
ほぼ完全に真相を見抜いていた〈黒猫〉は流石というべきでしょうか。
ちょっと美味しいところを独り占めしている感はありますね。
物語は綺麗にまとまっており,ミステリィとしては十分に楽しめます。
何処か淫靡な雰囲気が漂う展開も悪くありません。
忍の覚悟のなさが最後の最後で暴露される結末も皮肉が効いていました。
〈黒猫〉シリーズの番外篇的な扱いとしても良いのでしょう。
思わず本篇との整合性を確認したくなってしまいます。

(幻冬舎文庫 2017年)

タグ:森晶麿
posted by 森山樹 at 17:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想