2019年05月06日

加藤実秋『メゾン・ド・ポリス3 退職刑事とテロリスト』 

〈2019年読書感想16冊目〉
加藤実秋『メゾン・ド・ポリス3 退職刑事とテロリスト』


〈メゾン・ド・ポリス〉シリーズの第3作目にして初の長篇となります。
扱われる事件も爆弾によるテロ事件ということでいつもよりも大掛かりなもの。
と言っても,雰囲気はまるで変らないので,軽妙に楽しむことが出来ます。
因みに過去作品との関連性は全くないので単品で十分に面白い筈。
今回は迫田さんの別れた家族が物語に大きく関わってくることになります。
そして,メゾン・ド・ポリスのオーナーである伊達さんの素性が明らかに。
かなりの高官とは思っていましたが,まさか副総監とは流石に予想外。
そりゃ警視庁内で十分に顔が効くのも分かるというものです。
勿論,夏目さんと藤堂さんもそれぞれの役割を存分に果たしてくれます。
このあたりの協力しての捜査がこのシリーズの魅力と言えるでしょう。
事件とは関係ないところで高平さんが目立つのもいつも通りかな。
新たに退職間近の刑事である梅崎さんがひよりの相棒として登場します。
女性蔑視の言動が散見されますが,その真意は割と悲しい。
今後も何処かで姿を見せる予感があります。
また,特に此処まで活躍のなかった原田刑事が男を見せるのも熱い展開。
彼女である美玲とのやり取りも微笑ましいものがあります。
これまでは個性を感じなかっただけに焦点が当てられるのは意外でしたが。
事件そのものは順当と言えば順当。
解決の一端を担ったブランド名に隠された謎は安直過ぎるきらいがありました。
まあ,トリックの妙で読ませる作品ではないのでそんなに気にはなりません。
個人的には長篇よりも短篇のほうが好みなので,今後の方向性が気になります。
未だ吐露しない夏目が抱えるものを含めて次作を待ち望みたいと思います。

(角川文庫 2019年)

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posted by 森山樹 at 09:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想