2019年05月07日

ジェームズ・ロリンズ『ユダの覚醒(上)』

〈2019年読書感想17冊目〉
ジェームズ・ロリンズ『ユダの覚醒(上)』〈シグマフォース〉


科学と歴史の融合を掲げるアクション小説〈シグマフォース〉の第3作目。
今回の題材はマルコ・ポーロと人食いバクテリアということでいいのかな。
過去作以上に科学要素と歴史要素の乖離が激しい気がします。
特にマルコ・ポーロと人食いバクテリアを結びつける必然性に欠けるのですよね。
他にも天使の文字といった完全な神秘主義要素も扱われますが。
第1作目で登場したセイチャンやヴィゴー・ヴェローナ等の再登場は嬉しかった。
実際に『マギの聖骨』が今作を引き起こす遠因となっています。
その意味ではシグマフォース側の失策と言っても言い過ぎではないのかも。
例によって,グレイ,ペインター,リサ&モンクの3つの視点で語られます。
目まぐるしく細切れに舞台が把握し辛いのは難点。
このあたりも含めてまさにアクション映画を小説で読んでいる感があります。
また,グレイの両親が事件に巻き込まれるのも今作の特徴と言えるでしょう。
相変わらず,危機に続く危機で逆に緊張感を失っているのは残念。
一方で漸くギルドがシグマフォースの仇敵として直接対峙をするのは嬉しいです。
尤も,セイチャンは例によってというべきか,あっさりとギルドを裏切るわけですが。
アメン・ナセルとデヴェシュ・パタンジャリという今作の敵は割と楽しい。
特にデヴェシュ・パタンジャリの狂気の科学者感がたまりません。
彼に従うスリーナも意外な個性があって気になります。
そして,グレイたちと行動を共にするコワルスキの脳筋ぶりが良い。
なんというか,癒しの立ち位置として貴重な存在であります。
様々な形で各陣営が危機を迎えながら下巻へという展開もいつも通り。
此処から如何に事態を打開するのかということを楽しみたいと思います。
しかし,狂気を孕んだアカガニの集団には襲われたくないものですね。
海賊たちには同情せざるを得ません。

(竹書房文庫 2012年)

posted by 森山樹 at 06:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想