2019年05月09日

五代ゆう『グイン・サーガ(143)永訣の波濤』

〈2019年読書感想19冊目〉
五代ゆう『グイン・サーガ(143)永訣の波濤』


五代ゆうによって紡がれる〈グイン・サーガ〉の第145巻。
表紙は沿海州の船とともに舞台から姿を消すカメロン。
様々な意味で衝撃的であった彼の死に係る物語が一旦ここで幕を下ろします。
なんというか,復讐に身を捧げることを誓うマルコの姿が痛々しい。
イシュトヴァーンへの忠義はあくまでカメロンを通してのものだったことが分かります。
とは言え,マルコがイシュトヴァーンに復讐を果たす未来も見えません。
いずれにしても更なる不幸が待ち受けているように感じるのは辛いです。
久しぶりに沿海州が舞台ということで懐かしい人物も登場します。
あっさりと退場を余儀なくされる人物もまたいるわけですが。
ドライドン騎士団に新加入したファビアンの正体と目的は気になりますね。
そのドライドン騎士団のブランは沿海州から遠いヤガの地での冒険が続きます。
ヤガ方面ではブランやスカールがヨナ,フロリーとの合流を果たせて一安心。
イェライシャやイグ=ソッグ,ミロクの僧侶と奇妙な一行になっていますが。
ヤガに突如出現した巨樹の謎が今後の大きな主題となっていくのでしょうか。
そして,スカールやブランが求めるスーティは更に奇妙な一行となっています。
琥珀にウーラ,果てはグラチウスと人外ばかりというのが面白い。
兄としてドリアン王子を救うための意思を固めるスーティが泣かせます。
これで3歳というのだから,末恐ろしい。
リギアとマリウスはケイロニアのワルスタット侯領に足を踏み入れました。
不穏な動きを見せるワルスタット侯ディモスの真意が非常に気になります。
本人はクリスタルでの災禍以降は姿を見せていない筈。
本当に竜王の支配下となってしまったのであれば,ケイロニアにはかなりの痛手。
グインにとっても重臣の裏切りへの衝撃は計り知れません。
群像劇として幾つかの物語が同時並行的に進んでいくのは面白い。
但し,それ故に個々の物語の歩みが遅いのは難点であります。
それでも,懐かしい人物の再登場や伏線の回収等で楽しませてくれるのも事実。
今後もこの路線を是非とも踏襲して欲しいと願います。

(ハヤカワ文庫JA 2018年)

posted by 森山樹 at 06:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想