2019年05月27日

京極夏彦『今昔百鬼拾遺 河童』

〈2019年読書感想24冊目〉
京極夏彦『今昔百鬼拾遺 河童』


〈百鬼夜行〉シリーズの番外篇である〈今昔百鬼拾遺〉の第二作目。
前作の鬼に引き続き,今作では河童が扱われています。
次作は既に天狗と発表されているので,今シリーズは有名な妖怪を扱う模様です。
とは言え,有名だからこそ,その解釈は様々で興味深いものがあります。
冒頭からの全国の伝承における河童の多様性はそれを如実に表しているでしょう。
主人公は引き続き中禅寺敦子と呉美由紀のふたり。
また,薔薇十字探偵社の益田龍一もその有能ぶりを結構見せてくれます。
飄々として韜晦するあたりは相変わらずですけれどもね。
〈今昔続百鬼〉の多々良勝五郎も登場し,場を混乱させるのが楽しい。
尤も,あまりやりすぎると割と鬱陶しくなってくるのですが。
主筋は連続水死事件と模造宝石事件の謎を追うというもの。
一見無関係に見える事象がひとつに収まっていく過程はやはり楽しい。
特に今作は前作では目立たなかった敦子の推理というか想像が光ります。
そして,最後に美由紀の演説をもって物語を締めるという定型の模様。
まあ,美由紀は出番自体は多いのですが,それ程に目立ってはいません。
最初に河童談義をしていた美由紀の友人はもう少し物語に絡んで欲しかったなあ。
小山田,比嘉,池田,磯部と刑事達は意外に存在感がありました。
事件そのものは〈百鬼夜行〉本篇に比べるとだいぶん薄味です。
これは敦子と美由紀が探偵役を務めるという関係上仕方がないかもしれません。
それでも前作よりも今作の方が余程面白かった。
〈百鬼夜行〉シリーズを読んでいるという満足感を十分に得ることが出来ました。
前作よりも季節は更に進んでおり,同時期の京極堂達の動向にも触れられます。
既に日光の事件は解決しており,現在は東北で別の事件に巻き込まれているとのこと。
つまり『鵼の碑』以降の作品ということが言えるのでしょう。
仄めかしばかりで本篇がまるで刊行されないのは苛立たされます。
様々な事情はあるのかもしれませんが,早期の展開を望みたいと思います。
同時に『鵼の碑』やその次の作品では敦子の出番はほぼないのかもしれませんね。
大好きな人物なので,それは少し残念な気がします。
いずれにせよ,次作『今昔百鬼拾遺 天狗』も期待したいものです。

(角川文庫 2019年)

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posted by 森山樹 at 06:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想