2019年06月09日

北原尚彦『ホームズ連盟の冒険』

〈2019年読書感想26冊目〉
北原尚彦『ホームズ連盟の冒険』


『ホームズ連盟の事件簿』に続くホームズ物のパスティーシュの第2作目。
今回もホームズを取り巻く人物たちを主人公に据えた短篇集となっています。
彼処に正典に対する愛着や経緯が垣間見えるのが本当に素敵。
全部で6篇が収録されていますが,どれも大変お気に入り。
巻末の作者による解題を読むと更に面白さが増すのが良いです。
「犯罪王の誕生」と「R夫人暗殺計画」はモリアーティとモランが主人公。
どちらも悪漢小説としての楽しみ方が出来ます。
モリアーティが同じ名前の三兄弟という設定が盛り込まれているのが良い。
ただ,モリアーティが犯罪界へ身を投じるに至る過程は少し弱いかなあ。
「R夫人暗殺計画」はモラン大佐の魅力が爆発と言った感じ。
フォン・ヘルダーの設定も面白かったです。
彼の娘が正典に記されていたかは記憶がないなあ。
あそこまで詳細に描かれているので今後に何らかの形で生かすのかしら。
メアリー・モースタンが主人公の「蒼ざめた双子の少女」は後味が良くて好き。
まあ,ミステリィとしては割と安直な気がしますけれどね。
「アメリカからの依頼人」は今巻で一番好きかもしれません。
意外性のある所を突いてきたなあという印象があります。
「ディオゲネス・クラブ最大の危機」の主人公はマイクロフト・ホームズ。
その卓越した知性は流石ですが,寧ろ変装の腕前が凄い。
折々に体を動かすことへの愚痴が入るのも面白い。
最後の「ワトソンになりそこねた男」はスタンフォードが主人公を務めます。
ホームズとワトソンが同居する契機となる逸話が楽しい。
少年給仕ビリーやスタンフォードといった脇役を描くのが絶妙過ぎます。
モリアーティやモラン,マイクロフトは当たり前過ぎますからね。
ホームズ物のパスティーシュとしても期待以上の作品です。
細かな設定を含めて〈シャーロック・ホームズ〉への愛に満ちた短篇集でした。
改めて前作を読み直したくなります。
更なる続篇が描かれることを期待せざるを得ません。
「回想」「帰還」「最後の挨拶」と3冊はまだ書ける余地があるわけですからね。
或いは「叡智」を加えても良いのかもしれませんが。

(祥伝社文庫 2019年)

タグ:北原尚彦
posted by 森山樹 at 21:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想

購入記録(2019.06.09)

辻惟雄 奇想の系譜 ちくま学芸文庫 ¥1,404
藤原明 日本の偽書 河出文庫 ¥821
増田隆一 ユーラシア動物紀行 岩波新書 ¥1,037

珍しく三冊ともにノンフィクションとなります。
自分に欠けている教養を積極的に身に着けていきたいところです。
それぞれ感想については別のブログで書くことになるでしょう。
『奇想の系譜』は以前から読みたかった作品。
割と古めの刊行ですが,現在の美術趣味にも大きな影響を与えています。
『日本の偽書』は古史古伝を扱った作品です。
今後も積極的に読んでいきたい分野ですね。
『ユーラシア動物紀行』は博物系ということになるのかな。
動物地理学というのも面白そうです。

〈2019年書籍購入覚書〉 計41冊
posted by 森山樹 at 14:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 購入記録