2019年07月11日

京極夏彦『今昔百鬼拾遺 天狗』

〈2019年読書感想32冊目〉
京極夏彦『今昔百鬼拾遺 天狗』


〈百鬼夜行〉シリーズの番外篇である〈今昔百鬼拾遺〉の第三作目。
一応の最終作ということになるのかしら。
特に各篇が続いているわけではないので幾らでも続きは書けそうだけど。
今回の題材は天狗ということで,天狗攫いが事件として描かれます。
『邪魅の雫』の篠村美弥子の再登場が嬉しい。
相変わらずの素敵お嬢様ぶりを存分に発揮してくれます。
そのいでたちと言動は美由紀でなくとも惚れ惚れしてしまうというもの。
美弥子の友人の失踪が物語の発端となるので最後まで主要人物として活躍してくれます。
美由紀と敦子,それに美弥子のそれぞれの魅力が楽しい作品であると言えましょう。
事件そのものは割と安直というか,印象は薄いのですけれどね。
真犯人の下衆ぶりというか自分勝手さに反吐が出そうになります。
だからこそ,毎回恒例となった美由紀の一喝に爽快感を覚えるのですが。
益田や青木,木下,鳥口ら常連組の出演も素直に嬉しいですね。
尤も,益田は冒頭で美弥子にやり込められる場面の印象が強いです。
軽薄ながらも本来は真面目で優秀な探偵ではあるのですけれどね。
前作に引き続きこのシリーズではあまり扱いがいいとは言えません。
何はともあれ,番外篇とは言え久しぶりの〈妖怪〉シリーズを堪能しました。
それぞれの作品で本篇の伏線というか予告が張られていたのは楽しみ。
今巻の事件の時期は富士山や河口湖で新たな事件が発生していた模様です。
早くこのあたりの事件を読みたいもの。
番外篇ではなく本篇の重厚な構成がやはり一番好みなのですよね。
先ずは『鵼の碑』が早期に刊行されることを願ってやみません。

(新潮文庫 2019年)

タグ:京極夏彦
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2019年07月08日

若竹七海『プラスマイナスゼロ』

〈2019年読書感想31冊目〉
若竹七海『プラスマイナスゼロ』


葉崎市を舞台とした若竹七海の連作短篇集です。
題名のプラスマイナスゼロとは主人公を務める3人の女子高生のこと。
ユーリとテンコのどちらがプラスでマイナスかは謎。
ゼロが語り手でもあるミサキであることに異論はないでしょうけれども。
いつも通りに若竹七海作品に特有の毒気は健在。
とは言え,だいぶん抑え気味ではあります。
主人公3人組の中ではユーリが断然格好良くて好き。
テンコのとてつもなく不運なのに前向きで他人を思いやれる優しさも良いです。
収録されているのは6篇と後日談の掌篇が2篇。
幽霊等の超自然的な存在が組み込まれているのが如何にも若竹七海らしい感じ。
「青ひげのクリームソーダ」の肝心なところが描かれないのが大好き。
想像力が刺激されてしまいます。
一番好きなのは三人の出逢いを描いた「なれそめは道の上」かなあ。
とにかくユーリが格好いいお話です。
「クリスマスの幽霊」は人間の悪意が印象的な作品。
というわけで,若竹七海らしさが爆発しています。
その悪意に毒されない主人公3人組が非常によろしい。
「卒業旅行」と「潮風にさよなら」は後日談と言っていいのでしょう。
どちらも単行本には未収録だった筈なので読むのは今回が初めて。
「卒業旅行」はその名の通りに3人の卒業旅行を描いた作品。
ミサキの秘めたやりたいことが切なくて大好き。
「潮風にさよなら」は既に高校を卒業して何年も経った後の物語。
それぞれに成長した,けれども変わらない3人の姿が嬉しいです。
若竹七海の作品にしては珍しく爽やかな読後感があるのが素晴らしい。
この3人とはまた何処かで再会したいものです。
他の作品の脇役としてでもいいから再登場を祈念しています。

(ポプラ文庫 2019年)

タグ:若竹七海
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2019年07月07日

購入記録(2019.07.07)

若竹七海 プラスマイナスゼロ ポプラ文庫 ¥691

旅行中に購入した本です。
単行本版は既読の筈ですが,内容を忘れていたので購入しました。
読んでいるうちに思い出してくるのですけれどね。
単行本には未収録の書き下ろしが読めたのは嬉しい。
あまりこの種の商法は好みとは言えないのですけれども。
ミサキとユーリとテンコのその後が知れたのは良かったです。

〈2019年書籍購入覚書〉 計53冊
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2019年07月03日

高田崇史『卑弥呼の葬祭−天照暗殺−』

〈2019年読書感想30冊目〉
高田崇史『卑弥呼の葬祭−天照暗殺−』


高千穂と宇佐神宮で相次ぎ発生した殺人事件の謎を追う長篇ミステリィです。
その殺人事件の背景にあった日本の黎明期の謎にも迫ります。
と言うか,作者が作者だけに基本的には歴史上というか神話上の謎が主軸。
殺人事件のほうはいつも通りの舞台装置としての機能しか果たしていません。
神話上の謎のほうは素直に楽しい。
但し,最近の作者の著作の中で繰り返される事象が中心なので新鮮味には欠けます。
とは言え,今作において言えば,実質上の探偵役が〈QED〉の桑原崇というのが嬉しい。
事実上,〈QED〉シリーズに名を連ねても良い作品となっています。
恐らくは〈QED〉に組み込まれないのは棚旗奈々が登場しないかもしれません。
また,名前だけではありますが御名形史紋も登場します。
そもそも事件に巻き込まれる漣と響子も過去作に登場した人物たち。
或る意味では〈QED〉と〈毒草師〉ともに関わりのある作品と言えます。
まあ,この主題の作品であれば桑原崇と御名形史紋が登場するべきでしょうね。
後半は相変わらず警察関係者を前にしての桑原崇の長口上が楽しめます。
このあたりの展開はまさに〈QED〉そのままといった感じでありました。
奈々の合いの手が入らないのは少し寂しい気がしましたが。
やはり〈QED〉が一番好きなシリーズであることを実感します。
その意味では素直に満足出来た作品であるとは言えます。
天照と天照大神との関係は繰り返し述べられますが,論として破綻していません。
奇想な解釈ではありますが,相応の説得力を有しているのも事実。
ひとつの思考実験として楽しめる作品でありました。

(新潮文庫 2019年)

タグ:高田崇史
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2019年07月02日

2019年6月読書記録

2019年6月に読んだ本は以下の通り。
高井忍 『京都東山 美術館と夜のアート』
北原尚彦 『ホームズ連盟の冒険』
高井忍 『蜃気楼の王国』
辻惟雄 『奇想の系譜』
ジェームズ・ベッカー 『皇帝ネロの密使(上)』
ジェームズ・ベッカー 『皇帝ネロの密使(下)』
池上英洋 『残酷美術史』
高田崇史 『卑弥呼の葬祭−天照暗殺−』

6月の読了は8冊。
割と低調だったような気がしていましたが,例月並かな。
『奇想の系譜』と『残酷美術史』は美術系の本。
よって,感想は別ブログに委ねることになります。
久しぶりに読んだ高井忍がやはり自分好みで大好き。
暫く情報収集を怠っていたので,読んでいない作品がまだありそう。
これを機会に改めて作品に触れていきたいものであります。
『皇帝ネロの密使』はキリスト教成立の真相に迫るミステリィ。
面白くなくはなかったかなあ。
シリーズの続きもいずれ読みたいと思っています。
『ホームズ連盟の冒険』は正統派のホームズ・パスティーシュ。
大変面白くて大満足。
細かいネタを拾ってくれるのが北原尚彦ならではといった感じがします。
『卑弥呼の葬祭−天照暗殺−』は〈QED〉としてもいいんじゃないでしょうか。
名前だけ登場の御名形史紋の扱いが悪すぎる気はしたけれども。
まあ,いつも通りに歴史解釈の観点からは素直に楽しいです。
posted by 森山樹 at 05:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書記録