2019年07月03日

高田崇史『卑弥呼の葬祭−天照暗殺−』

〈2019年読書感想30冊目〉
高田崇史『卑弥呼の葬祭−天照暗殺−』


高千穂と宇佐神宮で相次ぎ発生した殺人事件の謎を追う長篇ミステリィです。
その殺人事件の背景にあった日本の黎明期の謎にも迫ります。
と言うか,作者が作者だけに基本的には歴史上というか神話上の謎が主軸。
殺人事件のほうはいつも通りの舞台装置としての機能しか果たしていません。
神話上の謎のほうは素直に楽しい。
但し,最近の作者の著作の中で繰り返される事象が中心なので新鮮味には欠けます。
とは言え,今作において言えば,実質上の探偵役が〈QED〉の桑原崇というのが嬉しい。
事実上,〈QED〉シリーズに名を連ねても良い作品となっています。
恐らくは〈QED〉に組み込まれないのは棚旗奈々が登場しないかもしれません。
また,名前だけではありますが御名形史紋も登場します。
そもそも事件に巻き込まれる漣と響子も過去作に登場した人物たち。
或る意味では〈QED〉と〈毒草師〉ともに関わりのある作品と言えます。
まあ,この主題の作品であれば桑原崇と御名形史紋が登場するべきでしょうね。
後半は相変わらず警察関係者を前にしての桑原崇の長口上が楽しめます。
このあたりの展開はまさに〈QED〉そのままといった感じでありました。
奈々の合いの手が入らないのは少し寂しい気がしましたが。
やはり〈QED〉が一番好きなシリーズであることを実感します。
その意味では素直に満足出来た作品であるとは言えます。
天照と天照大神との関係は繰り返し述べられますが,論として破綻していません。
奇想な解釈ではありますが,相応の説得力を有しているのも事実。
ひとつの思考実験として楽しめる作品でありました。

(新潮文庫 2019年)

タグ:高田崇史
posted by 森山樹 at 06:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想