2019年07月08日

若竹七海『プラスマイナスゼロ』

〈2019年読書感想31冊目〉
若竹七海『プラスマイナスゼロ』


葉崎市を舞台とした若竹七海の連作短篇集です。
題名のプラスマイナスゼロとは主人公を務める3人の女子高生のこと。
ユーリとテンコのどちらがプラスでマイナスかは謎。
ゼロが語り手でもあるミサキであることに異論はないでしょうけれども。
いつも通りに若竹七海作品に特有の毒気は健在。
とは言え,だいぶん抑え気味ではあります。
主人公3人組の中ではユーリが断然格好良くて好き。
テンコのとてつもなく不運なのに前向きで他人を思いやれる優しさも良いです。
収録されているのは6篇と後日談の掌篇が2篇。
幽霊等の超自然的な存在が組み込まれているのが如何にも若竹七海らしい感じ。
「青ひげのクリームソーダ」の肝心なところが描かれないのが大好き。
想像力が刺激されてしまいます。
一番好きなのは三人の出逢いを描いた「なれそめは道の上」かなあ。
とにかくユーリが格好いいお話です。
「クリスマスの幽霊」は人間の悪意が印象的な作品。
というわけで,若竹七海らしさが爆発しています。
その悪意に毒されない主人公3人組が非常によろしい。
「卒業旅行」と「潮風にさよなら」は後日談と言っていいのでしょう。
どちらも単行本には未収録だった筈なので読むのは今回が初めて。
「卒業旅行」はその名の通りに3人の卒業旅行を描いた作品。
ミサキの秘めたやりたいことが切なくて大好き。
「潮風にさよなら」は既に高校を卒業して何年も経った後の物語。
それぞれに成長した,けれども変わらない3人の姿が嬉しいです。
若竹七海の作品にしては珍しく爽やかな読後感があるのが素晴らしい。
この3人とはまた何処かで再会したいものです。
他の作品の脇役としてでもいいから再登場を祈念しています。

(ポプラ文庫 2019年)

タグ:若竹七海
posted by 森山樹 at 06:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想