2019年07月18日

ジェームズ・ベッカー『預言者モーゼの秘宝(下)』

〈2019年読書感想34冊目〉
ジェームズ・ベッカー『預言者モーゼの秘宝(下)』


モーゼの十戒を巡る三つ巴の戦いを描く『預言者モーゼの秘宝』の下巻です。
イスラエルに舞台を移しての追撃戦が楽しい。
主軸となるのは四枚の粘土版に残された暗号の解読。
面白いのは面白いのだけれど,途中で面倒になって読み飛ばしてしまいます。
試行錯誤の末に真実に辿り着くのは良いのだけれどね。
敵陣営もほぼ同じ材料から暗号をきちんと読み解くというのは楽しいです。
結果的には漁夫の利を得る陣営も登場するわけですが。
下巻からはイスラエルの諜報機関モサドも登場するのはその筋としては大好き。
と言っても,表立って活躍するわけではないのが難点ではあります。
前作でもそうだったけれど,アンジェラが助けを求める学者の有能さは異常。
本来の専門分野に止まらない広範囲の知識と人脈を見せてくれます。
一方でクリスはほぼ肉体労働と戦闘担当といった感じかなあ。
尤も,暗号解読にはクリスが無意識に漏らす直感が貢献するわけですが。
クリスとアンジェラの組み合わせは悪くないのでしょうね。
最終的に発見されたモーゼの十戒の落としどころも悪くはないです。
但し,前作同様に表沙汰にはならずに闇に葬られた感があるのは気になるところ。
キリスト教成立の謎を追った前作との整合性もきちんと検証してみたいなあ。
まあ,モーゼ自体はキリスト教成立とは直接関わらないからいいのかな。
敵組織に魅力がないのは問題点のひとつ。
現時点では前作も今作も単なる独立した犯罪組織に止まっていますからね。
作品全体を通じて登場する宿敵が欲しいように思えます。
しかし,発端となったオコーナー夫妻の殺害が最終的にはおざなりだったのはいいのかな。
ヤクーブと繋がっていた警官の処遇も放置された感がありますし。
前作同様に強烈な印象を残す作品ではありませんが,それなりに楽しめます。
歴史ミステリィ好きには悪くない作品でしょうね。

(竹書房文庫 2016年)

posted by 森山樹 at 06:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想