2019年08月14日

ジェームズ・ロリンズ『ケルトの封印(下)』

〈2019年読書感想45冊目〉
ジェームズ・ロリンズ『ケルトの封印(下)』〈シグマフォース〉


ケルトの伝説と人類の人口爆発の成否が描かれる〈シグマフォース〉の第5作目です。
相変わらず,世界規模の災厄なのに,割とあっさりと事態が収拾することに違和感。
但し,それ以外については,シリーズ中でも最高級に面白かった。
特にケルトや聖マラキ,黒い聖母が扱われる歴史的側面はたまりません。
最後の方はドゥームズデイブックそのものはあまり関係なくなっていたけれども。
幾つかの歴史の謎を巧みに組み合わせる手腕はやはり素晴らしいです。
ケルトとエジプトを結ぶ言説が鮮やかに解き明かされる場面は大好き。
ケルト十字の意外な使い方も十分に納得のいくものでありました。
真実か否かは別にして,思考実験として知的好奇心を満たしてくれます。
科学的な側面は相変わらずよく分からないなあというのが正直なところ。
というか,ギルドの真の目的が明かされていないのが結局のところ問題な気がします。
このあたりは今後明かされていくことになるのでしょう。
ギルドと通じていたイヴァー・カールセンも結局は利用されていただけですしね。
そして,正式にギルドからの離脱となったセイチャンの行く末も楽しみ。
今巻ではことあるごとにグレイに対する思慕を表していたのが可愛い。
漸くヒロインとしての立ち位置を確立したと言えるのかもしれません。
ギルドの一端を知るものとしての存在感も期待したいものです。
一方でギルドの幹部のひとりがあっさりと退場したのは拍子抜け。
何と言うか,自滅という気がしないでもありませんが。
次作以降でこのあたりの事情はきちんと扱われて欲しいなあ。
グレイもペインターもモンクもコワルスキーも見せ場があったのは嬉しかった。
特にコワルスキーはいろいろと意外な活躍を見せてくれたのが楽しいです。
一方でジョン・クリードの退場はいささか残念な気がします。
序盤から中盤の活躍から新たな戦力として期待していたのですけれどね。
特にモンクの心の傷として残りそうなのが今後に尾を引くかもしれません。
というわけで,期待以上に面白かった作品でありました。
ギルドとの戦いを描く三部作の第1作目ということで残り2作も面白そう。
次なるシグマフォースの戦いに早く触れたいと思います。

(竹書房文庫 2014年)

posted by 森山樹 at 06:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想