2019年08月17日

ジェームズ・ロリンズ『ジェファーソンの密約(上)』

〈2019年読書感想46冊目〉
ジェームズ・ロリンズ『ジェファーソンの密約(上)』〈シグマフォース〉


ギルドの起源とアメリカ建国の謎に迫る〈シグマフォース〉の第6作目。
ネイティブアメリカンを祖に持つペインター司令官がほぼ主役となっています。
姪であるカイが事件に巻き込まれているというのもありますが。
というか,グレイが様々な事情でやや冴えない立ち位置なのですよね。
セイチャンが今回は当初からシグマフォースへ協力姿勢を見せるのは嬉しい。
レイチェルを交えたグレイとの奇妙な三角関係はそのままのようですが。
前作に引き続きギルドとの対決が主体ということで非常に楽しい。
今作の敵であるラファエル・サンジェルマンもなかなか素敵な人物です。
傍に仕えるアシャンダとの関係も興味深い。
歴史的事象はアメリカ建国と第十四番目の州の秘密について。
ベンジャミン・フランクリンの手紙に記されたギルドの紋章の謎が面白い。
アメリカ建国時にもギルドが或る種の力を持っていたことが示唆されます。
そして,それはジェファーソンやフランクリンとは敵対する勢力としてでした。
イロコイ連邦の歴史的な役割は知らなかったので刺激になります。
アメリカ建国についてもう少し知る必要を感じました。
そして,科学的事象はニュートリノとナノマシンということになるのかな。
いまいちまだ判然としない部分が多いのですけれども。
ネイティブアメリカンが封印した呪いと科学者の消失が魅力的です。
触れることで物質が変性し,分解・消失に至る事象が恐ろしい。
この事象とニュートリノ量の変化に如何なる意味を持たせるのに期待します。
折に触れてスーパーカミオカンデが登場するのは妙に嬉しさを感じますね。
気になるのは久しく登場していなかったグレイの両親の問題が悪化していること。
なんとなく,致命的な事件が起きる前触れな気がしてなりません。
過去作よりも陰鬱な印象が強いのですよね。
尤も,こういうときにコワルスキーの存在が癒しとして役立つのですけれども。
ペインターとグレイの両軸から描かれる物語は下巻へ。
アメリカ建国とギルドとの関係の真相が解き明かされることに期待します。

(竹書房文庫 2014年)

posted by 森山樹 at 08:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想