櫛木理宇『ホーンテッド・キャンパス 桜の宵の満開の下』
人間関係に変化が見られる〈ホーンテッド・キャンパス〉第3作目です。
新たにこよみの元同級生で好青年の小山内陣が登場する巻でもあります。
今作も全部で5篇が収録された短篇集となっています。
また,怪異趣味はこれまでよりも更に不穏さを増しているのが素敵。
「白丁花の庭」と「泣きぼくろのひと」以外の作品は不気味な悪意を感じさせます。
と言っても,それ程恐怖感を覚えることはないのですが。
「泣きぼくろのひと」はなんとなく釈然としないのが残念。
事件を操る人の真意は分からないでもないのですけれどね。
関わった人たちを一番傷付ける終わり方になってしまったような気がします。
「覗く眼」は怪異よりも人間の所業のほうが遥かに怖い作品。
まあ,定番と言えば定番でありましょう。
一番好きなのは「月の夜がたり」かなあ。
雪女を巡る伝承を絡めた重層的な構造が楽しめました。
六部殺しが扱われるのも個人的には嬉しい。
小山内陣の登場で森司とこよみの関係が微妙に変化するのがじれったい。
というか,森司の煮え切らない心情に苛立ってしまうのですよね。
寧ろ小山内陣の完璧人間のようでいて少し抜けたところの方が魅力的。
読者からすれば,こよみの想いは明らかなだけにもどかしさを感じます。
そのこよみにもそれ程に魅力を感じないのが拍車をかけているというか。
圧倒的に先輩の藍の格好良さが際立っているのですよね。
花見の席に自分が釣った魚を刺身にして差し入れる豪快さもたまりません。
森司とこよみに陣を交えた三角関係が主軸になっていくのは辛いなあ。
これ以上となると辟易してしまいそうな感があります。
ホラー小説としての立ち位置からはぶれて欲しくないですね。
(角川ホラー文庫 2013年)
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