2019年10月06日

五代ゆう『グイン・サーガ(146)雲雀とイリス』

〈2019年読書感想60冊目〉
五代ゆう『グイン・サーガ(146)雲雀とイリス』


吟遊詩人装束が絵になるマリウスが表紙の〈グイン・サーガ〉第146巻です。
パロの王子よりも,ササイドン伯よりも,この姿がマリウスには似つかわしい。
尤も,現在はそうは言ってもいられない状況ではあるのですが。
或いはこの状況下でも自己の自由のみを目指すマリウスが素敵というか。
その素敵さは無責任であるということと同意義ではあります。
相変わらず,幾つかの重大な事象が同時に進行しているのが楽しい。
グインはクリスタルで復活したアルド・ナリスに遂に再会を果たしました。
この甦ったアルド・ナリスはヤンダル・ゾックによって作られた存在なのかな。
とは言え,その精神の在り方はかつてのアルド・ナリスそのものですが。
生という頸木から解放された彼が追い求めるのは飽くなき知識欲のみ。
ヤンダル・ゾックに盲従することのない彼の存在は今後の鍵となりましょう。
そして,沿海州ではそのクリスタルを巡っての会議が執り行われました。
久しぶりにライゴールのアンダヌス議長が登場したのは嬉しい。
早速,アグラーヤのボルゴ・ヴァレンとともに謀略をパロに仕掛けようとします。
此処にドライドン騎士団のファビアンが絡んでくるのは興味深いですね。
彼の真意,そして雇い主は未だに謎のまま。
意外に重要な存在となってくるのかもしれません。
イシュトヴァーンへの復讐心に燃えるマルコ達とは異なる道を歩むのでしょう。
カメロンへの恩義とスーティへの愛着に揺れるブランの決断も気になります。
スーティの弟であるドリアン王子にもまた数奇な展開が訪れました。
アストリアスが至って常識的な存在へと回帰したのは喜ばしい。
これでモンゴールにも戻れぬ身となってしまいましたけれどね。
グラチウスの元にドリアンとスーティが揃うというのはどうなることか。
仇敵であるイシュトヴァーンの子たちを守護する騎士にアストリアスはなるのかな。
ケイロニアではリギアとヴァルーサの邂逅が楽しかった。
このふたりの気が合わないわけがないですよね。
一方でハゾスはやっぱり好きになれないなあ。
事態の混迷に一役買っている自覚はあるのかしら。
歩みは遅いながらも着実に物語が進行しているのは嬉しい。
中原の諸国家に沿海州も加えた壮大な物語の続きを楽しみにします。
どの国にもヤンダル・ゾックの影が垣間見えるので未来が予測出来ません。

(ハヤカワ文庫JA 2019年)

posted by 森山樹 at 11:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想