2020年01月12日

ジェフリー・ディーヴァー『扇動者(上)』

〈2020年読書感想2冊目〉
ジェフリー・ディーヴァー『扇動者(上)』


嘘を見抜く天才を主人公に据える〈キャサリン・ダンス〉シリーズの第4作目です。
今作で対峙する相手は題名通りに群集心理を巧みに突く凶悪な扇動者。
その悪質な手法はこれまでの誰よりも腹立たしさを覚えます。
反抗の目的が未だに判然としないというのも非常に怖い。
キャサリン・ダンス自身も犯人の標的にされてしまっています。
上巻末ではかなり危機的な状況に陥っていますが,打開策はあるのでしょうか。
また,同時並行的に起こっている事件が如何に絡むのかも楽しみです。
特にキャサリン・ダンスが左遷される原因となった事件が気になります。
本当にキャサリン・ダンスの失策なのかも疑わしいように感じます。
ジョン・ボーリングとの関係は一歩進んだけれど,この要素はどうでもいいかなあ。
相変わらず,マイケル・オニールにも心揺れる感情を持っているようでもありますが。
如何なる苦難も乗り越えていくキャサリン・ダンスは本当に魅力的。
左遷されながらも,きちんと自己の立ち位置は確立していますしね。
登場人物は多いのですが,個性が立っているので混同することはありません。
スティーヴ・フォスターの動向にやや不穏なものを感じるのは気のせいかなあ。
扇動者であるアンティオック・マーチの視点も興味深いものがあります。
キャサリン・ダンスとアンティオック・マーチの息詰まる心理戦の結末が楽しみです。
そして,その先に潜むであろう事件の真の姿も期待せざるを得ません。
改めてジェフリー・ディーヴァーの語り口の上手さを実感させられます。

(文春文庫 2019年)
posted by 森山樹 at 08:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想