2020年02月16日

椹野道流『壺中の天 鬼籍通覧』

〈2020年読書感想8冊目〉
椹野道流『壺中の天 鬼籍通覧』


法医学研究所を舞台とするミステリィホラー小説シリーズの第3作目です。
これまで以上にホラー小説要素は強めといいかもしれません。
と言うよりも,ミステリィ要素が希薄化しているというべきかな。
提示される謎は魅力的なのですが,その真相は超科学的なもの。
このあたりを許容出来れば十分に楽しむことが出来ましょう。
個人的には論理的な解法を諦めてしまいましたが,それなりに面白かった。
但し,ホラー要素自体は本来の自分が好む恐怖感ともまた異なります。
何処となく生理的な嫌悪感を覚えてしまうのはどうなのかなあ。
男性と女性とでも異なる感慨を得そうな結末であったかと思います。
事件の根源にインターネッとが関わるというのは当時としては新しかったのでしょう。
何せ,もともとの刊行が2001年でありますからね。
スマートホン等の描写は新装版に際しての改稿でありましょう。
このあたりは基本的には気にならないので,そのままでも良かったなあ。
それよりも事件の解決の為とは言え証拠品を勝手に持ち出す警察官は流石にまずい。
或る種の正義の暴走と言えなくもない行為でありましょう。
今作のみならず,法医学研究所の積極的な捜査への介入が気になります。
実際のところはどうなのかは分かりませんけれども。
複数の事象が一点に集約される展開は好みですが,偶然が過ぎるのも気になります。
尤も,いろいろ気になるところはありますが,全体的には十分に楽しみました。
超自然的な展開ということで先が読めないのも事実であります。
もう少し科学と超科学の均衡が取れれば,更に好みのシリーズになる気がします。

(講談社文庫 2019年)
タグ:椹野道流
posted by 森山樹 at 11:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想