2020年02月19日

アンドリュー・メイン『生物学探偵セオ・クレイ 森の捕食者』

〈2020年読書感想9冊目〉
アンドリュー・メイン『生物学探偵セオ・クレイ 森の捕食者』


最新の科学技術を駆使する生物学者セオ・クレイを主人公とするミステリィです。
野生動物に襲われて死んだとされる女性生物学者の死から物語は始まります。
割と突っ込みどころは多いながらも,何というか不思議な魅力に満ちています。
動物の鉤爪と犯行に使われた刃物は直ぐに識別されるような気がします。
そして,結果として判明した被害者の数が多過ぎるのもどうなんだろう。
特定の地域でそれだけの行方不明者が頻出するのは普通に不自然に思えます。
尤も,アメリカの事情故に理解出来ない部分もあるのかもしれません。
セオ・クレイが開発した矢鱈と精度の高い遺体発見プログラムも謎です。
御都合主義の展開が続くのですが,だからと言って面白くないわけではありません。
全く手掛かりがなく,孤立無援の状況から事件を解決に導く活躍は楽しい。
明晰な頭脳と比例する個性的な性格のセオ・クレイこそが最大の魅力でありましょう。
暴走する素人探偵の或る意味での素晴らしさが堪能出来ます。
と言って,知性だけで解決するわけではなく,最後は戦闘というのも不思議です。
娯楽小説の粋を突き詰めている感があります。
但し,個人的には警察が頑迷で無能に過ぎるというのはやや残念。
主人公を引き立てるが故に警察があまりにも卑小化されているきらいがあります。
また,真犯人の正体に伏線が殆どなく唐突に登場するのも不満が残りました。
セオ・クレイ以外の登場人物の使い捨て感もかなり覚えてしまいます。
数少ない例外であるヒロイン役のジリアンは魅力的でありましたけれども。
結末がかなり性急なのはちょっと唖然としてしまいました。
もう少し余韻を残すような終わり方には出来なかったものなのかなあ。
個人的には割と面白かったのですが,他人には進め難い作品でありました。
次作がどのような展開になるのか楽しみではあります。

(ハヤカワ文庫HM 2019年)
posted by 森山樹 at 20:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想