2015年05月26日

峰守ひろかず『絶対城先輩の妖怪学講座(6)』

〈2015年読書感想9冊目〉
峰守ひろかず『絶対城先輩の妖怪学講座(6)』


 妖怪学を追求する絶対城先輩の活躍を描く〈絶対城先輩の妖怪学講座〉の第6巻。事実上の第一部完となっています。今回の題材は妖怪学で最大の禁忌とされる“鬼”について。これまでの物語の中で幾度も絶対城を妨害してきた勢力が顰衆として直接的に立ちはだかります。真怪“のっぺらぼう”である糸倉も再登場するのが楽しい。勿論,杵松やクラウス教授,織口先生らの出番も十分にあります。とは言え,今巻はただひたすらに絶対城と礼音の仲が深まっていくだけのように思えたのは気のせいかなあ。どちらも恋愛感情は不得手に思えるのですが,傍から見ていると相思相愛にしか思えないのですよね。尤も,これについては礼音にとっては新たな脅威の存在の登場もあり,如何なる方向に転ぶのかは微妙なところです。あんまり恋愛方向へ遷移するとつまらなくなる気もするのだけれども。

 今巻は補章を除いては“鬼”に関係する妖怪や神が章題となっています。この趣向は素直に好き。一応,各章は短篇としての体裁も取っており,その意味では5篇が収められた短篇集とも言えましょう。各篇はいずれも面白いのですが,特に「牛鬼」が個人的には興味深かった。妖怪の正体をかつて地球上を闊歩していた古代生物に求めるのはこのシリーズの常ではありますが,“牛鬼”の正体であると絶対城が名指しした生物には思わず納得せざるを得ません。以前の巻で取り上げられた“鵺”と同じくらいに説得力のある仮定だと思います。この新鮮な衝撃があるから,このシリーズを読むのが止められません。また,「清姫」はミステリィ色がやや濃いのが好み。真相そのものは十分に予見の出来るものではありましたけれども。一方で本来の中心となるべき「鬼」と「酒呑童子」にはやはり不満を抱かざるを得ません。日本を古来から陰で支配してきた一族という設定自体に無理なものがあります。徒に風呂敷を広げ過ぎたかなあという印象です。また,鬼の正体も割合に予想が付き易かったですし,その根拠となるものが恐らくは架空の文献というのが残念でした。ちょっと期待し過ぎていたのかもしれません。

 此処まで期待感を煽ってきた“鬼”に関する物語がやや拍子抜けだった以外は十分に楽しめる作品でありました。補章にて真の姿を見せた“のっぺらぼう”糸倉は今後のシリーズの中でも同じ妖怪学を求める徒としての活躍を見せてくれそう。尤も,糸倉の正体自体はそれ程予想外というわけでもなかったのですけれども。大好きなシリーズであることに間違いはありません。今後も妖怪の真相についての新鮮な驚きを与えてくれることに期待をしています。相変わらず,杵松が胡乱な気はするのだけれど,本当に普通の人間なのかなあ。織口先生の更なる活躍も楽しみ。何はともあれ,第一部完とするに相応しい結末であったように思います。
posted by 森山樹 at 06:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想
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