2015年12月25日

葉山透『0能者ミナト(6)』

〈2015年読書感想51冊目〉
葉山透『0能者ミナト(6)』


 零能者こと九条湊の過去の一端が明かされる〈0能者ミナト〉の第6巻です。閑話以外に2話収録されていますが,偶数巻ということで事実上一続きの物語となっています。今回,湊が対峙する相手は人頭牛身の怪異である件となります。件と言えば,その予言が有名ですが,件の予言の正体が面白い。まあ,割合に予測が出来るのは事実でありますが,その予言を阻止する為の条件は素直に面白かった。とは言え,その条件は完全に偶然頼りというのはちょっと残念。少なくとも,湊は件の予言に屈したということになるかと思います。但し,そこからの反撃は見事なものでありました。転生することで永劫の命を保持する件を完全に滅したというのは或る意味で歴史的な事象ということになりましょう。尤も,其処に至るまでは危機の連続でありました。超人的な身体能力を見せる湊というのも珍しいものがあります。いずれにせよ,湊の窮地を救ったのが沙耶の乙女心というのが楽しかったです。今回はあまりユウキや孝元の活躍がなかったのは残念ですけれどね。

 今回収録されているのは「首」と「件」の2話。それに閑話として「戯」も収められています。「首」も「件」も同じく件を扱った物語となりますが,「首」は高校生時代の湊が主人公というのが面白い。現在同様に斜に構えた部分は変わりませんが,年相応の幼さと素直さが新鮮でありました。同じく高校生だった理彩子との出逢いが描かれるのが嬉しい。友人である友哉に恩人である小野寺警部と湊に関わりのある人物の登場も興味深いものがありました。尤も,友哉に関しては物語の関係上,湊の回想の中でしかその人物像は窺えないわけですけれども。小野寺警部に対する湊の恩義はちょっと意外。大事な人を喪うことを恐れるが故に現在のような性格を装っているのだとすれば悲しいものがあります。だからこそ,沙耶やユウキの存在が貴重となるのでしょう。露悪的な言動とは裏腹に結果的にはふたりを護る形で湊は行動していますからね。「件」は「首」から10年を経て再び邂逅した件との戦いが面白い。化学者である堅剛猛雄の再登場も嬉しかった。彼の口から語られる大学生時代の湊の研究が興味深いです。或る意味で無意識のうちに湊は件になろうとしていたということも言えるかと思います。合わせ鏡のような存在である湊と件は結局は宿敵として対峙する運命であったのでしょう。因みに湊と理彩子の互いへの想いも垣間見る事が出来ます。ふたりの素直じゃない加減が実に可愛い。この出逢いから現在に至るまでのふたりの物語はまた描写して欲しいものです。その際には孝元も混ぜると嬉しいですね。

 少年時代の湊の意外な素顔が楽しい物語でありました。存外に熱い性格だったということが意外でもあり,けれども納得出来る部分でもあります。繊細だった雰囲気が何故此処まで失われたかというところは興味深い。そして,閑話では倫寧に対する沙耶の片思いがの空回り感が大変可愛らしかった。湊と沙耶とユウキ,湊と沙耶と理彩子,湊と理彩子と孝元,沙耶とユウキと倫寧と幾つもの三角関係が出現しているのも面白いです。このあたりの人間関係が如何に発展するのかも楽しみ。早く湊と孝元の出逢いも読みたいものです。
タグ:葉山透
posted by 森山樹 at 21:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想
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