2016年01月27日

葉山透『0能者ミナト(7)』

〈2016年読書感想5冊目〉
葉山透『0能者ミナト(7)』


 零能者こと九条湊と総本山の法力僧である孝元の過去が語られる〈0能者ミナト〉の第7作目です。とは言っても,出逢いが描かれるわけではないのが残念。それはまたの機会のお楽しみということになりそうです。理彩子とも既に知り合っているようですが,本篇には名前だけの登場に留まりました。この三人の若き日の物語もいずれ期待したいものです。今巻も短篇が2本収録されていますが,どちらも湊の普段見せない表情が垣間見えるのが面白い。斜に構えた露悪的な人間ではありますが,その本性は異なる雰囲気を感じます。或いは完全に捻くれるにはまだ純粋過ぎるというべきかもしれません。だからこそ,魅力的なのであり,理彩子や孝元が友人であり続け,沙耶やユウキが慕うのでありましょう。尤も,ユウキはともかく沙耶が妙に湊に毒されつつあるのは気になるところではあります。或る意味ではユウキよりも沙耶の方が影響を受けているのかもしれません。ユウキは寧ろ素直に少年らしくなってきた感があります。或いは湊を反面教師としているのかもしれませんけれども。

 上述のように2篇が収録。それにいつも通りの閑話が末に収められています。「七」は伝承に名高い七人ミサキを扱った物語。七人ミサキの本質とそれを逆手に取った湊の戦略が鮮やか。とは言え,それは大変苦いものでありました。いつもより多めの酒を呷る湊の気持ちはよく分かります。このような経験を繰り返すことで湊の現在のような人格が形成されたのかと思うと辛いものがあります。そして,それを決して割り切ることの出来ない湊の純粋さと孝元の覚悟に魅力を感じるのです。羅漢と功刀はいつか再登場するのでしょうか。結末で沙耶とユウキからの報告を受ける湊の姿が大変印象的でありました。「化」は時の止まった村を舞台とした不思議譚。その壮大に過ぎる試みが圧巻であります。そして,その試みの陰にあった小さな想いが切なくてたまりません。或る種の幸福な結末であったと言っていいのでしょうか。少なくとも,彼が満足して逝ったことだけは救いに感じます。それはともかくとして妙に懐かれる湊の姿が楽しい作品でありました。沙耶とユウキの活躍も楽しめます。というよりも,ひたすらに彼を愛でていただけのように思えるのは気の所為でしょうか。湊がいなければ物語は起こりえず,湊がいたからこそ物語は終結したというのは皮肉に思います。SF的な見地からも興味深い物語でありました。

 2篇ともに如何にも〈0能者ミナト〉らしい物語で大満足です。殊に「七」はその独自の発想が大変魅力的でありました。七人ミサキの本質なんて考えることもなく,単純に受け入れていましたが,幾らでも考えようはあるのだなあと感心します。相変わらず,閑話の肩の力が抜けた感じも楽しい。今回は理彩子が湊ともに孝元を追い詰める意外な展開が面白かったです。まあ,あれは素直に孝元に非があるような気がしてなりませんけれども。次巻への予告になっていないのは少し残念。まあ,それは読み始めてからのお楽しみということにしておきましょう巻を追う毎に加速度的に面白くなっているのが嬉しいです。
タグ:葉山透
posted by 森山樹 at 22:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想
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