2019年03月31日

キム・ニューマン『モリアーティ秘録(下)』

〈2019年読書感想9冊目〉
キム・ニューマン『モリアーティ秘録(下)』


セバスチャン・モラン大佐の記述による〈ホームズ〉パスティーシュの下巻。
この下巻には3篇が収録されています。
「六つの呪い」あたりからキム・ニューマンのキム・ニューマンらしさが爆発。
無闇やたらに情報量が多いのが素敵。
恐らくは登場人物の殆どに原典があるのですが,流石に全部は分かりません。
さらりとクトゥルー神話に言及するあたりも個人的にはたまらなく好み。
題名からもわかる通り物語は「六つのナポレオン像」が基になっています。
「ギリシャ蛟竜」は「ギリシャ語通訳」を基にした作品。
正典に記されたモリアーティ教授の設定を巧みに生かしているのが楽しい。
まあ,翻訳は本当に大変だったと思いますが。
分かっていて混乱に拍車をかけるキム・ニューマンの姿勢は大好きです。
幽霊狩人カーナッキの登場はちょっと嬉しかった。
最終作「最後の冒険の事件」はこれまでとは趣を変えた作品となります。
この作品は正典「最後の事件」の裏側に秘められた真相が描かれます。
ここにきて漸くホームズやワトソンの動きが描かれるのが嬉しい。
尤も,モラン大佐の視点故にそれ程格好いいものとは言い難いですが。
ホームズに至っては名前すらも読んでもらえないですしね。
このあたりは如何にもキム・ニューマン作品といった感じがします。
最後の解釈は如何様にも取りようがあるのが心残りかなあ。
何はともあれ,キム・ニューマンの本領発揮と言った作品でありました。
注釈で言及された作品に触れているとなお楽しかったことでありましょう。
モラン大佐の諧謔精神に溢れた語り口も非常に好みでありました。
悪漢小説としても十分に出来のいい作品だと思います。

(創元推理文庫 2018年)

posted by 森山樹 at 09:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想
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