2019年06月24日

ジェームズ・ベッカー『皇帝ネロの密使(下)』

〈2019年読書感想29冊目〉
ジェームズ・ベッカー『皇帝ネロの密使(下)』〈クリス・ブロンソンの黙示録〉


キリスト教成立の真実に迫る宗教ミステリィの下巻です。
謎の石板を巡るコーザ・ノストラとの息詰まる追撃戦が繰り広げられます。
また,事件の発端となった邸宅から発見された石板の解釈も面白い。
あまり期待していなかったのですが,それなりに楽しむことは出来ました。
事件の果てに見えるキリスト教成立の真実も外連味に満ちてよろしい。
どうせ描くなら此処まで無茶苦茶な説を提唱して欲しいものであります。
しかし,キリスト教社会では物議を醸しださないのかしら。
創作だから問題ないという姿勢なのかもしれませんが。
いろいろと気になることがないわけではありません。
コーザ・ノストラが関わる必然性が薄いのも事実。
また,首領自らが現場に直接赴くというのも不自然な気がしますね。
ヴェルトゥッティ枢機卿が事実上黒幕の立ち位置というのは良かったけれども。
カタリ派もせっかく名前が登場したのにいまいち活かしきれていなかったしなあ。
それでもキリストという存在の解釈は非常に興味深いものがありました。
もう少し皇帝ネロその人も物語に絡めて欲しかったなあという印象はあります。
とは言え,十分に楽しい宗教ミステリィでありました。
次作はモーゼが主題ということでちょっと期待してしまいます。
しかし,今作で明らかになった事実は次作でも活かされるのかしら。
真実は闇に葬られて終わりというのでは萎えてしまいますが。
まあ,キリスト教社会を一変させる内容だけに扱いは難しいでしょうけれどね。
知的な刺激を得られる一冊でありました。

(竹書房文庫 2015年)

posted by 森山樹 at 05:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想
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