2019年10月11日

田中芳樹『創竜伝(14)月への門』

〈2019年読書感想61冊目〉
田中芳樹『創竜伝(14)月への門』


16年ぶりに刊行された〈創竜伝〉の第14巻です。
時事的な要素が多いだけにまさか復活するとは思っていませんでした。
前巻までの内容は朧気にしか覚えていなかったのですが,一応何とかなりました。
人間関係さえ頭に入っていれば十分に補えることでありましょう。
今巻は京都から名古屋までの竜堂兄弟たちの旅路と京都幕府の行く末が中心です。
竜堂兄弟は相変わらず降りかかる火の粉を圧倒的な強さで払うのが楽しい。
以前に倒した牛種の幹部である共工の後継が登場しますが,そんなに強さは感じない。
寧ろ,その悪辣で狡猾な手法が印象的でありました。
特に飛天夜叉や野狗子による名古屋襲撃はかなり残虐な場面が多い。
富士山噴火で壊滅的な関東に加えて混乱に拍車がかかります。
一方の京都幕府では征夷大将軍の小早川奈津子が大暴れといういつもの展開。
その圧倒的な存在感は時を経てもかなり印象的でありました。
水池や蜃海,虹川も出番はそれなりに多いのですが,完全に活躍を食われています。
一方で上畑医師が妙に描写が多かったのが気になるところ。
或いはこの人も水池たち同様に竜種に仕える存在なのかもしれません。
そして,竜堂兄弟の支援者として活躍してきた黄老がこの巻で舞台から降りました。
その最後はあっさり過ぎて,あまりにも悲しい。
あの世というものがあるならば,弟の黄大人と再会して欲しいものであります。
気になったのはスマホやインスタグラムなどという言葉が頻出したこと。
物語の最初はまだソビエト連邦が健在だったのですよね。
時代背景が全く分からなくなってしまっています。
時事要素が強く扱われる作品だけに仕方のないのですが,違和感を覚えざるを得ません。
そして,来年刊行予定の第15巻で物語は完結するとの予告がありました。
この状態から如何に落としどころを模索するのか期待よりも不安が大きいです。
牛種を統べる蚩尤も今だ本篇には登場していませんからね。
舞台が牛種の本拠地である月の裏側ということになりましょう。
幾つかの伏線の解消を含めて何処まで納得ある終わり方となるのか注目します。
相変わらず,瑤姫が一番魅力的だなあと思い出した巻でありました。
何はともあれ,再開自体は喜ばしいことではありますね。
既刊分が入手出来るようならば,再読を進めて行きたいと思います。

(講談社ノベルス 2019年)

タグ:田中芳樹
posted by 森山樹 at 06:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想
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