2019年12月04日

加藤実秋『メゾン・ド・ポリス4 殺人容疑の退職刑事』

〈2019年読書感想70冊目〉
加藤実秋『メゾン・ド・ポリス4 殺人容疑の退職刑事』


退職した刑事達の活躍を描く〈メゾン・ド・ポリス〉シリーズの第4作目です。
長篇だった前作とは異なり再び短篇集となっています。
個人的にはこのシリーズは短篇集のほうが似つかわしく思えますね。
収録されているのは全部で5篇。
食品偽装やネットバッシング,老人を対象とした詐欺等の現代的な犯罪が並びます。
1980年代を想起させる雰囲気が漂っていた加藤実秋作品にしては面白い趣向でしょう。
また,退職刑事達の過去が絡む事件が用意されているのもシリーズ恒例となっています。
何と言っても,個性豊かな退職刑事の面々の活躍が楽しい。
気障で瀟洒な化学分析屋の藤堂さんが一番のお気に入りかな。
彼らに振り回される牧野ひよりも着実な成長の跡が窺えるのが嬉しいです。
過去作よりも出番はやや控えめな印象がなくはなかったのですが。
ひよりの上司である新木課長と松島係長もいい味を出していました。
原田はあまりいいところがなかったのは残念です。
殺人容疑を掛けられた迫田さんが新木課長と原田に取り調べられる場面は大好き。
元刑事ということで手法を熟知した相手というのは遣り難いことでありましょう。
藤堂の元妻である沙耶ももう少し出番が欲しかったかなあ。
今作では夏目の過去が明らかになる第五話が好みでありました。
過去の犯罪を地道に捜査する退職刑事達の姿が頼もしい。
それぞれの得意分野に応じて活躍の場が与えられるというのが良いですね。
時間の壁に守られた真犯人がきちんと罰を与えられるのも因果応報でありましょう。
大掛かりな犯罪が描かれることがないのもシリーズの雰囲気に合っています。
伊達がメゾン・ド・ポリスを作った理由が次作での焦点となりましょう。
警視庁副総監だった伊達の過去は未だに描かれていないのですよね。
好々爺といった印象しかない伊達の現役時代の姿も知りたいものであります。
シリーズ好きとしては素直に楽しめる作品でありました。
〈ICE MOON〉の登場が少なかったりと過去作に比べて変化がある部分も見られます。
それも含めて更なるシリーズの展開が楽しみとなる作品でありました。

(角川書店 2019年)

タグ:加藤実秋
posted by 森山樹 at 06:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想
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