2019年03月18日

ジェームズ・ロリンズ『マギの聖骨(上)』

〈2019年読書感想5冊目〉
ジェームズ・ロリンズ『マギの聖骨(上)』〈シグマフォース〉


米国国防総省の特殊部隊シグマフォースの活躍を描くシリーズの第1作目。
聖書に登場する東方の三博士,すなわちマギの秘密を巡る冒険譚です。
『ウバールの悪魔』で登場したペインター・クロウも司令官として活躍。
カサンドラ・サンチェスやキャラ・ケンジントンの名前も垣間見えます。
このあたりは正しい前日譚として嬉しいところ。
コーラル・ノヴァクがまるで登場しないのは残念ですが,次作以降に期待かなあ。
再編成されたシグマフォースの新たな隊長はグレイソン・ピアース。
そして,モンク・コッカリスとキャスリン・ブライアントというチームになります。
個人戦から団体戦へと移行した感があって楽しいです。
また,ヒロイン役のイタリア国防総省警察のレイチェルも魅力的。
更にギルドの暗殺者セイチャンが絡んで人間関係もより複雑になります。
シグマフォース,ギルド,ドラゴンコートと三陣営による戦いも面白い。
超電導を初めとする科学要素もふんだんに盛り込まれているのが素敵ですね。
ドイツからヴァチカンへと遷移する戦いから目が離せません。

(竹書房文庫 2012年)

posted by 森山樹 at 05:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想

2019年03月14日

高田崇史『試験に出ないQED異聞』

〈2019年読書感想4冊目〉
高田崇史『試験に出ないQED異聞』


高田崇史のデビュー20周年を記念して刊行された短篇集です。
〈QED〉や〈古事記異聞〉など講談社ノベルスで刊行されたシリーズの番外篇でもあります。
「九段坂の春」は既に別の短篇集で既読。
タタルの中学生時代のほろ苦い初恋が描かれます。
完結まで読んだ身としては,割合に重要な掌篇であったと実感しますね。
シリーズ後半の重要人物の初登場する篇でもありました。
「QED〜ortus〜鬼神の社」はタタルと奈々の出逢いの物語。
事件そのものは大したことがないのですが,この後の二人を想うと感慨深いです。
「木曾殿最期」は〈QED〉と〈古事記異聞〉が交差する物語です。
〈古事記異聞〉の主人公である雅が民俗学を志す契機になった出来事が語られます。
雅の目を通して語られるタタルと奈々の姿が面白い。
まあ,傍から見ればある種の不審人物ではありますね。
木曾殿こと源義仲の実像に迫る本篇も読みごたえがありました。
いつもとは異なり殺人事件が絡みませんが,これで全く問題ありません。
素直に歴史や民俗に焦点を絞ったほうが楽しめるような気がします。
〈古事記異聞〉は今後の展開に期待しています。
また,〈QED〉は既に完結していますが,折に触れて番外篇の発表があると嬉しいです。

(講談社ノベルス 2019年)

タグ:高田崇史
posted by 森山樹 at 06:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想

2019年03月12日

キム・ニューマン『モリアーティ秘録(上)』

〈2019年読書感想3冊目〉
キム・ニューマン『モリアーティ秘録(上)』


『ドラキュラ紀元』のキム・ニューマンの最新邦訳作品。
所謂〈シャーロック・ホームズ〉のパスティーシュということになります。
探偵役がモリアーティ教授というのはともかくモラン大佐が語り手というのは面白い。
ある種のピカレスク・ロマンとして読むこともできるでしょう。
また,キム・ニューマンらしく虚実織り交ぜた人物が登場するのも楽しい。
この辺りは作者の真骨頂と言えるでしょう。
上巻に収録されているのは4篇。
個人的には「血色の記録」と「ダーバヴィル家の犬」がお気に入り。
「血色の記録」でのモリアーティ教授とモラン大佐の初対面のやり取りがたまらないです。
「ダーバヴィル家の犬」はそのあまりにもどうしようもない結末が大好き。
正典をモリアーティ風に皮肉な物語として換骨奪胎しているのが素敵です。
あまりにも下巻を読むのが惜しくて現在は積んでいます。
とは言え,残りの物語も気になるので早めに読むことになるでしょう。

(創元推理文庫 2018年)
posted by 森山樹 at 21:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想

2019年03月10日

ジェームズ・ロリンズ『ウバールの悪魔(下)』

〈2019年読書感想2冊目〉
ジェームズ・ロリンズ『ウバールの悪魔(下)』〈シグマフォース〉


幻の都市ウバールを巡る争いが描かれる冒険小説の下巻です。
科学要素は存外に薄かったのが残念。
というよりも,寧ろ神秘主義的な傾向が強く垣間見えました。
尤も,これはこれで大好物の範疇ということになるのですけれども。
敵対組織ギルドの真意があまり見えなかったように感じます。
今作での最大の敵役となるカサンドラの最期も割にあっさりでした。
サフィアと彼女が属する民族ラヒームの正体は意外でした。
ただ,その説明は結局超自然的で受け入れ難いものがありました。
全体的に冗長ではありましたが,それでもなお楽しめたことも事実。
特にウバールを探す過程でのサフィアとオマハの推理は面白かったです。
主人公であるペインター・クロウは意外に影が薄い感じは否めず。
寧ろサフィアのほうにこそ主人公的な役割を感じてしまいました。
まあ,事実上の第0作としての役割は一応十分に果たせていたようには思います。
本篇開幕となる次作に大いなる期待を寄せたいですね。

(文春文庫 2013年)
posted by 森山樹 at 10:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想

2019年03月05日

ジェームズ・ロリンズ『ウバールの悪魔(上)』

〈2019年読書感想1冊目〉
ジェームズ・ロリンズ『ウバールの悪魔(上)』〈シグマフォース〉


米国国防総省の特務部隊シグマフォースの活躍を描くシリーズの第0作目。
当初はシリーズに組み込まれていなかったようです。
登場人物が後のシリーズに何処まで登場するのかも現段階では不明。
但し,刊行順では一番最初ということで,特に問題なく読むことができます。
本作の題材は中東の幻の都市ウバールと反物質を含有した隕石を巡る戦い。
このあたりの組み合わせはなかなか好奇心がそそられます。
主人公であるペインターとサフィア,そしてかつての相棒で仇敵となるカサンドラの関係も面白い。
カサンドラが所属する謎の組織ギルドの詳細も楽しみです。
シグマフォースとギルドの戦いに介入する謎の第三勢力の存在も楽しい。
現時点では一方的に追い詰められているシグマフォースの反撃を待ちたいと思います。
そして,中東の幻の都市ウバールの謎が如何に明かされるのかも。

(竹書房文庫 2013年)
posted by 森山樹 at 06:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書感想